第 36 回
お坊さんでも住宅ローンは組める?お坊さんの懐事情やお寺の土地について
「出家詐欺」という犯罪をご存知でしょうか?
多重債務者が出家して戸籍の氏名を変更し、多額の住宅ローンを金融機関から騙し取る手口です。2014年5月にNHKの番組「クローズアップ現代」で取り上げられ、『月刊住職』2014年7月号でも特集されました。
お坊さんが職場(お寺)とは別に自宅を購入する場合、どうやって住宅ローンを組むのでしょうか?
お坊さんの懐事情
「坊主丸儲け」という言葉は、僧侶が仕事をする上で元手がかからないことを意味しますが、時として「宗教法人だから税金が免除されててズルい」と誤解されています。
非課税対象は「喜捨金(お布施・お賽銭・読経料など)」や墓地・納骨堂の経営など「公益事業」であり、住民税・所得税・消費税・社会保険料は支払っています。
経営基盤が盤石なお寺はむしろ少ない方で、経営は副業なしで成立しないほどです。
一般社団法人日本仏教協会の資料によると『75,000あるお寺のうち4分の1が空き寺』です。お寺を潰すためには解体費用だけではなく、墓地や納骨堂の移転費用も必要だからです。
境内地という特殊な土地
お坊さんが家族で住むための住居を「庫裏(くり)」と呼びます。大規模な寺院以外は、事務を行う寺務所と兼用となっていることが多く、地目(土地の種類)が「境内地」となっているため、民間の住宅ローンを組むことは厳しいです。
なぜなら、境内地の建物と敷地は担保にできないためです。地目を変更する場合は「広告義務」といって、檀家さんはじめ関係者への連絡が必要です。
1つの土地を2つ以上に分割することを「分筆登記」といいます。
この分筆を利用して、お寺の敷地内に宅地を登記するケースが多いようです。地目が宅地であれば住宅ローンを申し込むことができるためです。
住宅ローンではなく融資で
ここで考えたいのは庫裏の役割です。お坊さんが家族で住むことが目的であることは確かですが、同時に寺院運営を円滑に行うための設備としても捉えられます。
そのため、住宅ローンではなく、宗教法人の設備として融資を受ける選択肢があります。信用金庫であれば中小企業が主な取引相手ですから、お寺にとって妥当な相談相手と言えます。
お坊さんもお金の悩みはもっている
前述の雑誌『月刊住職』には人生相談コーナーがあり、「最近自分の説法に自信が持てません」というお坊さんのお悩みが投稿されていました。お坊さんにも悩みはあり、宗教行為に携わる者だからといって、お坊さんもお金と無縁ではいられません。
お坊さんも気軽にファイナンシャルプランナーに相談できるような世の中になるよう、金融リテラシーの向上に貢献したいです。
執筆日2023年4月13日
監修日2023年4月29日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。