第 41 回
カードローンを利用していた人が亡くなったら?借金の相続について
人生いつ何が起こるかわかりません。
カードローンの負債を残したまま債務者(お金を借りていた人)が亡くなることも考えられます。テレビドラマでは、強面で体格のいいスーツ姿の方々が遺族のお宅を訪問するシーンがありますが、実際にに債務者が亡くなった後の返済は「誰が・どのように」対応するのでしょうか?
カードローン会社が「貸倒損失」で処理する
カードローンは無担保・保証人なしの場合が多いので、残された家族に返済の義務は残りません。
カードローン会社では、未回収分の債務を貸倒損失として計上すれば、損金として扱われ法人税の節税になります。未回収分の取り立てに要する労力と節税によるメリットを比較した結果、カードローン会社が債権を放棄して遺族に債務残高を請求しないことがあります。
ただし、この場合でも遺族は故人の信用情報を請求する手続きを行い、過払い金がなかったかどうか確認するようにしましょう。なお、過払い金には相続税がかかりません。
相続する場合
債務者の遺産を相続する場合は、プラスの財産に加えてマイナスの債務も相続する必要があります。
相続の種類には3種類ありますが、原則自分が相続人だと知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
相続放棄
プラスの財産より負債の方が多い場合には、相続を放棄するのが有効です。
返済義務は免除されますが、不動産や預貯金などのプラスの財産を相続することもできなくなります。
相続人が複数いる場合は、1人が放棄しても他の相続人が相続します。相続人が相続放棄した場合は、相続順位が次の人に移るので注意が必要です。
単純承認
プラスの財産もマイナスの債務も一緒に相続します。負債よりプラスの財産の方が多い場合に有効です。
手続きは特に必要なく、3ヶ月が経過すれば単純承認とみなされます。相続した財産の一部を使ってしまった場合も単純承認になります。
限定承認
返済額が不明な場合に選択する方法です。
相続する資産の範囲内で負債も受け継ぐ、簡単に言うと払える分だけ返済する方法です。
例えば、相続放棄をしたら本来相続するはずだった家も放棄することになり、住む家がなくなってしまう、という場合に有効です。
遺言状や遺産分割協議書があった場合
例えば子どもが3人兄弟で3番目の子どもに障害がある場合に「負債は長男と次男に任せて3男には相続させない」という遺言状が残されたら?
遺言によって相続債務の帰属者を定めたとしても、そのことを盾に債権者(お金を貸していた人)に対抗することはできません。ただし相続人の間では有効となります。
具体的な金額を例にすると、3,000万円の負債が残されたとします。
まず、子どもは3人とも1,000万円を債権者に支払わなくてはなりません。それとは別に、3男は長男と次男に対して500万円ずつの返還請求をすることができます。
このことは相続人同士が話し合いをして相続について決めた場合の、遺産分割協議書でも同様です。
葬儀以外にもやることはたくさん
葬儀や諸手続きに時間を要する中で、さらに債務整理に追われるのは大変でしょうが、相続人として最後まで気を抜かずに事後処理を完了しましょう。
執筆日2023年4月14日
監修日2023年4月30日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。