第 142 回
車融資って何?マイカーでお金が借りられる?グレーな仕組みとその危険性
「マイカーでお金が借りられる」「乗ったまま融資」という広告を見たことはありますか?
これは「車融資」と呼ばれるもので、自動車を担保にお金を借りられるサービスです。いったいどのようなシステムなのでしょうか?
車融資の種類
自動車担保ローンには、おもに「お預かり」と「乗ったまま」の2種類があります。
「お預かり」はその名前の通り、業者に車を預けて融資を受ける形式です。返済できなければ車を売却して契約終了です。
「乗ったまま」は業者が車を預からずに融資を受けられますが、業者が車検証を預かり名義を変更することが多いです。
危険じゃないの?
まず融資額は、利用者の属性よりも自動車の価値に比重が置かれます。そのため、貸出中は中古車査定の基準に応じて融資額が決められます。また、車の所有権を手放した形になりますが、自動車税や自動車保険は利用者が支払うことになります。
最も問題なのは「車検証の名義変更に必要」という名目で手数料が要求されます。車検証の名義変更を陸運局で行なった場合、手数料と収入印紙代を合わせてもそれほど高額ではありませんが、人件費を上乗せして手数料を要求する場合があります。
車金融を申し込んだ業者が悪徳業者であった場合は、手数料が法外な金額になる可能性もあります。
違法じゃないの?
車を担保にして融資をすること自体は違法ではないと思われます。ただし、道路運送車両法第66条第1項により、車検証は運転する自動車に保管することが義務付けられています。実際に処罰される可能性は低いとはいえ、リスクがあることは確かです。
車融資を行なっている業者の登録業種は、主に貸金業者・質屋・リース業者ですが、中には闇金業者のような無登録業者も存在します。正規の貸金業者であっても金利以外に法外な手数料を要求すれば、違法とみなされる可能性があります。
しかし、登録が質屋であれば、質屋営業法で上限金利が年利109.5%と設定されています。また、登録がリース業者であれば業者が利用者の車を買い取り、その車を利用者に貸し出すという形になります。
そのため、利用者は返済ではなくレンタル料を支払うことになるので、利息制限法で規制されている上限金利を超える金額を請求されることも考えられます。
なぜ銀行にはないのか
地方銀行や信用金庫では法人対象の事業用ローンに限り、事業用車両担保ローンを取り扱っているところがあります。しかし個人を相手に、自動車を担保と認める銀行は目にしません。
勝手に移動できない不動産は担保にすることができますが、車は乗ってどこかへ逃げられる可能性があります。そのため、自動車を担保として成立させることは難しく、一般の金融機関では個人の自動車担保ローンの取り扱いがないと考えられます。
車融資には注意を
車融資は明確に違法ではありませんが、黒に近いグレーゾーンの可能性もあります。どこの金融機関からもお金を借りられないブラック状態でなければ、メリットよりもデメリットの方がはるかに大きい可能性が高いでしょう。
執筆日2023年5月8日
監修日2023年5月12日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。