第 153 回
消費者金融が倒産したらどうなるの?借金の返済はなくなるの?事例も紹介
もし消費者金融が倒産した場合には、借金の返済が帳消しになるのでしょうか?その通りであれば、倒産寸前の消費者金融を狙って融資を受けようと考える人がいるかもしれません。実際のところはどうなのでしょうか?
過去の倒産事例
金融機関も民間企業であることに変わりはないので、経営状態が悪化すれば倒産することも十分にありえます。過去には武富士、三和ファイナンス、アエル、丸和商事、栄光、ネットカード、連専、クレディアなどが倒産しています。
2010年9月には、大手消費者金融の武富士が会社更生法の適用を申請し、事実上倒産しました。レオタード姿でダンスを踊る女性たちのCMで一斉を風靡したものの、業界トップ企業の倒産は当時大きな話題となりました。
なぜ倒産したか
消費者金融が大きな影響を受けたのが、2006年の貸金業法改正です。この改正でグレーゾーン金利が撤廃の方向に向かったため、これ以降は上限金利を超える利息の返還を求める過払金請求が急増しました。
結果、この過払金返還によって消費者金融の資金繰りが大幅に悪化し、多くの消費者金融が倒産しました。
倒産後はどうなるか
融資した側が、相手に対して返済を請求できる権利を「債権」と呼びます。企業が倒産した場合は、この債権が管財人と呼ばれる個人や法人に引き継がれます。管財人とは倒産した企業の業務や財産管理をするために選任される個人や法人で、消費者金融が倒産した場合は金融庁に選任された弁護士がその任に当たる場合があります。
この管財人が倒産の手続きを進めて、債権を含めた事業の継承先が決められます。事業の継承先や合併先となった法人が、債権回収会社に回収を委託する場合もあります。どのようなかたちにせよ、債権はいずれかの会社が継承するので、返済がなくなるということはないと考えるべきでしょう。
利用者が注意すること
債務が残っている場合は返済が続きますが、過払い金があった場合はどうなるのでしょうか。過払い金の有効期限は10年とされていますが、請求先の消費者金融が倒産した場合は請求期間が短縮される場合があります。
また、消費者金融が破産、会社更生、民事再生のどの手続きをとるにせよ、倒産するということは債務超過になっていることが多いでしょう。そのため、過払い金額が減額される可能性があります。
債務はなくならず、リスクが増える可能性も
消費者金融が倒産しても債権は他の会社に継承されるので、返済の義務がなくなることはないと考えるべきでしょう。もし倒産した消費者金融に対して過払い金があった場合は、手続きが遅れると返還される金額が減少するリスクがあります。
債権の持ち主が変更された場合は通知が来るので、その事実を把握したらどのようなケースに該当するか確認しましょう。そして不要な過払い金を支払うことがないように、普段から借入額と返済額をきちんと把握しておくようにしましょう。
執筆日2023年5月8日
監修日2023年5月12日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。