第 160 回
貸金業を廃止した「みなし貸金業者」とは?返済や過払い金はどうなるの?
貸金業を廃業して、債権回収のみを行なっている貸金業者を「みなし貸金業者」と呼びます。
借入残額があった場合は返済する義務があるのか、過払い金があった場合は請求できるのか、その他どのような影響があるのかを整理してみます。
みなし貸金業者の概要
貸金業を廃止する場合には、国や都道府県に「廃業届」という申請書を提出する必要があります。廃業届を提出すると、新規の貸付を行うことはできなくなります。
貸金業を廃止して「みなし貸金業者」となっても、それ以前の契約や借入金は無効にはなりません。債権者としての権利は残っているので、貸したお金の回収は可能とされます。そして、この債権回収を行なっている間は、他の貸金業者と同じように貸金業法が適用されます。このことは貸金業法で定められています。
みなし貸金業者への返済
利用者に借入残高があった場合は、みなし貸金業者となった以降も返済の義務があります。前述の通り、みなし金融業者も貸金業法を遵守しなければならないので、強引な取り立てや法定利息を超える高金利の請求は違法になります。
債権の回収が続いている限り、みなし貸金業者は都道府県に残貸付債権の状況を報告することが必要です。このことは各都道府県のホームページでも記載されています。
過払い金
みなし貸金業者に対しても過払い金請求は可能な場合があります。弁護士や司法書士に相談するのが良いでしょう。
ただし、みなし貸金業者が債権回収を完了または放棄して完全に廃業した場合、過払い金請求は相当困難になると考えられます。弁護士や司法書士に依頼する手数料と過払い金を天秤にかけて検討するのが賢明でしょう。
総量規制の対象になる?
みなし貸金業者は貸金業者として扱うとされていますが、形式上はすでに貸金業者ではありません。そのため、みなし貸金業者となったら、信用情報機関からも脱退しているのが通常です。
ということは、みなし貸金業者に対して借入残高があっても、信用情報機関には管理されていない可能性があります。
しかし、このことを利用して、他の貸金業者から総量規制を超える融資を受けようとするのは、かなりグレーな手段となるので控えてください。
「みなし貸金業者」という存在を知ろう
廃業した「みなし貸金業者」であっても債権回収は続くので、返済残高がある利用者は返済する義務があります。信用情報に残らない可能性があるからといって、延滞しないように計画的に返済しましょう。
完全に廃業した場合は過払い金の請求が困難になるので、「みなし貸金業者」に過払い金があると分かった時点で、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
執筆日2023年5月8日
監修日2023年5月12日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。