第 97 回
高所得の人でもカードローンを利用するの?高所得者向けカードローンと日常生活費
カードローンはどのような方が借りるイメージがありますか?収入があまりなくお金に困っている人などを想像しますか?
しかし、現実には、高所得者でもカードローンを利用することがあり、所得が高いゆえの落とし穴もありそうです。
今回は、高所得者がカードローンを借りる理由について説明していきます。
利用者の年収分布
日本貸金業協会協会の調査によると、貸金業者から借り入れを行ったことがある人は利用者の個人年収は「300万以下」「301〜500万」「501万以上」がほぼ均等に25%前後でした。(2022年8月調べ)
「800~1000万円」、「1001万円以上」の方でもそれぞれ3.5%が借入経験があり、高所得者と呼ばれる個人であっても7%が借入経験がありました。
また、最頻値は300~500万円の年収の層で27.7%でした。年収で一番低い層が一番借入経験が多くあるのかと思っていましたが、実は300~500万円の層が一番多いという結果でした。総量規制の問題などで、中所得者層で返済能力がある方のほうがが借りやすい傾向があるのかもしれませんね。
出典:日本貸金業協会「資金需要者等の借入意識や借入行動等に関する調査結果報告」
高所得者向けカードローン
銀行も高所得者をターゲットにしたカードローンを提供しています。名称も「◯◯ゴールドローン」や「△△プレミアムカードローン」など、ハイクラス向けのクレジットカードのような響きがあります。
銀行は属性の良い顧客を確保できるメリットがあり、高所得者は比較的低金利でカードローンを利用できるメリットがあります。
用途に違いはあるのか
前述の全国銀行協会の調査では、借入金の使途で最も多いのが「日常の生活費」です。
ここで考えたいのは、高所得者にとっての「日常の生活費」です。
以前に新聞で、電力会社の社員が原発事故の影響で給与・ボーナスがカットされ、百数十万しかなかった貯金が底をつき、借金生活になりそうという話や、妻がパートに出たり車を売ったりしなければならないほど困窮している社員もいるという話を見ました。
その話を見て思ったことが、まず年収に対して貯蓄の額が少なすぎることが否めません。
また、「妻がパートに出る」ことが「困窮している」と考える、その金銭感覚が生活費不足に至った要因と思われます。
収入が多いからといって支出を抑えず、貯蓄も少なければ借金生活も当然の帰結でしょう。
欲求による借金はマイナスを産む
日本は累進課税なので、高所得者は税金も多くなります。とはいえ、所得が多いほど手取りが多いのは揺るがぬ事実と考えられます。
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると年収1000万以上の割合は5%以下です。「年収1000万程度は高所得とは言えない」という意見もありますが、相対的に考えると税金を考慮しても生活には充分と言えるでしょう。
高所得者は、さらに上の富裕層に対する憧れから身の丈に合わない消費や、タワーマンション・高級外車・高級家電と次々に出費が重なるのではないでしょうか?
しかしそれは、平均所得層から見ると欲望を満たすための借金であり、投資する価値が低いと考えられます。価値と見合わない出費を繰り返すべきではないのは、所得の多寡に関係なく、資産管理で重要な原則でしょう。
出典:国税庁「標本調査結果 民間給与実態統計調査結果」
高所得でも残るお金がなくなってしまうことも
自己投資なら自分に対するリターンが期待できますし、住宅ローンなら不動産が残ります。しかし、必要以上の消費を重ねると返済が苦しくなります。
高所得者の支出が多いこと自体は問題ではありませんが、所得に左右されない金融リテラシーの向上が必要ではないでしょうか?
執筆日2023年4月18日
監修日2023年5月12日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。