第 169 回
個人間融資の実態とは?存在するリスクと事例を解説
おもにSNSなどを通じて行われる「個人間融資」という金銭の貸し借りがあります。
一見すると需要と供給がマッチした事例に見えますが、実態はハイリスクで違法性の高い取引です。
個人間融資とは
個人間融資とはSNSなどを通じて個人間で金銭の貸し借りを行う行為です。
例えば、ツイッターのハッシュタグで「#個人間融資」と検索すると、貸したい側も借りたい側も条件を記載して募集しています。また、インターネットで「個人間融資」と検索すると、同じように募集する掲示板が見つかります。
どの点が違法か
無許可で貸金業を営んでいたと判断されると「貸金業法」違反となります。そのため、通常は「相談に乗ります」「困っている方はご連絡ください」など、金銭の授受を明らかにしない表現で募集しています。
さらに、個人間であっても法外な高金利であれば、「出資法」および「利息制限法」にも抵触します。
そのため、金融庁や国民生活センターでは、個人間融資で見知らぬ相手からの借り入れをしないように注意喚起しています。
主な被害事例
保証金や手数料と称して先にお金を振り込ませて、振り込まれたら連絡を断つ程度は序の口です。途中で「怪しい」と感じて取り消しを申し込んでも、キャンセル料が必要と主張して解約させない手口があります。
また、融資はされるものの、結果として法外な高金利になっている可能性が高いようです。
他にも、銀行口座の売買やクレジットカードの現金化を持ちかけるなどの手口があります。また、話をすり替えて別サイトへの登録へと誘導し、キャッシュバックが受けられると称して、偽サイトで個人情報を収集する手口もあります。
大きな問題は、個人間融資で貸す側の多くが闇金などの違法業者である可能性が極めて高いことが挙げられます。しかし、業者だけでなく肉体関係を条件に現金を女性らに貸し付けた、「ひととき融資」で逮捕された個人もいました。
いずれにせよ、個人間融資が犯罪の温床になっていることは疑いようがないでしょう。
借りてしまう心理
突然ですが「1万円貸して」と頼まれたらどうしますか?大抵の人は躊躇すると思いますが、断ったとしても直後に「じゃあ1,000円でいいから」と言われたらどうでしょうか?「まぁ1,000円くらいなら」という気持ちになるのではないでしょうか?
これは「ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩的要請法)」と呼ばれ、断られるほどの大きな要求を先に出して、断られたら小さな要求に変えるという交渉術です。
違法業者も「ウチは闇金みたいにトイチ(=10日で1割の利子)とか悪どいことはしてないから」と言って、結局は違法な高金利になっている可能性があります。
借りる側の心理として「正常性バイアス」という原因が考えられます。 正常性バイアスとは、自然災害のように自分にとって被害が予想される状況下にあっても、都合の悪い情報を無視して「自分は大丈夫」と間違った認識をする特性のことです。
自然災害で起こる正常性バイアスに対しては、日頃の避難訓練に効果があると言われています。お金のトラブルに対しては災害と同じように、日常生活の中で金融リテラシーを向上させることが対策と言えるでしょう。
疑う心は忘れずに
個人間融資を希望する人は、既に正規の貸金業者から多額の借金を抱えていたり、ブラックリスト入りしていて審査に通らないと考えられます。
しかし、個人間融資ではニュースにはならなくても被害にあった人が大勢存在しており、利用しないことが最善のリスク回避であることを認識しておくべきでしょう。
執筆日2023年5月1日
監修日2023年5月12日
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。
大学在学時よりFPを志し、外資系損害保険会社、eラーニング専門企業に勤務。卒業後、税理士法人勤務を経て、外資系生命保険会社出身の専務とともにFP事務所を開業。2018年4月に法人化し、FPサテライト株式会社を設立、代表取締役に就任する。
現在は、相談業務、Webメディアの執筆、セミナー講師等、幅広く活動を行なっている。また、税理士法人勤務の経験から、中小企業向けの経理業務支援なども行っている。
金融商品を取り扱わず、お客様の立場に立った中立な相談、幅広い分野からの問題解決をモットーとしている。