第 75 回
中国で広まる信用スコア「芝麻信用」とは?
キャッシュレス決済の先駆けともいえる中国では、キャッシュレス決済が既に普及しており、取引履歴からその人を格付けする「信用スコア」の活用が進んでいます。
今回はその中でも利用者の多い「芝麻信用」について説明します。
芝麻信用とは?
芝麻信用は「ジーマクレジット」と読み、中国アリババグループのアント・フィナンシャルサービスグループが開発した個人信用評価システムです。SNSでの発言やアリババでの購入履歴、「学齢・職歴」「資産保有状況」「交友関係」等の様々なデータを元に、個人の信用度を測る「芝麻スコア」を集計、提供しています。
芝麻スコアは350点~950点の間で採点され、点数が高いほど信用度が高いと評価される制度となっています。
このスコアの活用先は大きく6つのカテゴリーに分かれます。
- 個人向け融資可否や上限額の判断、ローン金利の優遇
- 後払いオプションの可否や上限額の判断(病院やお店で後払いが可能)
- デポジット免除(ホテルやレンタカー、レンタサイクル等)
- ビザ取得の際の書類免除
- 待ち時間なしの特権(出国時に専用レーンの使用が可能等)
- C2C(一般消費者間の取引)やマッチングサービスにおける信用
逆にスコアが減点されると信用度が下がり、これらのメリットが享受できなくなります。
スコアの採点方法の詳細が明らかにされていませんが、以下のような行為を行うことで減点されると予想されています。
- 支払いの遅延
- 交通違反
- レンタル品の未返却・期限超過・未清算
「減点されるかもしれない」という懸念は中国の人々の行動を良い方向に向かわせているようです。実際にこれまで大量に放置され、問題となっていたシェアサイクルが所定の場所に戻されるようになるなど、利用者のマナーが向上しているそうです。
信用スコア事業が普及しない日本の現況
日本でも個人の信用スコアを評価する事業を推進すべく、2016年にはみずほ銀行とソフトバンクが「J.Score」に共同出資し、2019年にはLINEが「LINE スコア」での信用スコア事業参入を表明したほか、ヤフーやNTTドコモ、クラウドワークスも参入を表明した。
しかし、個人スコアを評価する際に個人情報が勝手に利用され外部に流出される疑いが広がり、ユーザからの信頼を得られなかったことから、信用スコア事業から撤退する企業が相次いでいます。
2019年6月に提供が開始された「Yahoo!スコア」は2020年8月を以ってサービス提供が終了され、「J.Score」は「LINE スコア」を提供するLINE creditに統合された後、2023年1月を以ってサービス提供が終了されています。
個人の信用(クレジット)が活用される社会像
個人の信用度が数値化されると人を評価しやすくなります。
信用度が高い人がメリットを享受できると、他の人も追随しようと信用度を高める行動をするでしょう。
その結果、犯罪率や個人の貸し倒れ率の低下が促進され、生活・経済的信用性の面ではプラスに働くのではないでしょうか。
執筆日2023年4月16日
監修日2023年4月20日
大阪市立大学商学部学士課程修了。学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。