第 100 回
ローンの名目金利と実質金利を理解して賢く借りよう
皆さんは名目金利と実質金利の違いをご存じですか?
ただの金利はわかるけど、名目と実質が付くと首をかしげてしまいますよね。
そこで今回はこの2つの違いについて解説します。違いを理解して日常生活に活かしてみましょう。
名目金利とは
皆さんが普段よく目にする、金融機関の広告やポスター等に表示されている金利のことです。融資や国債、定期預金や住宅ローン等々、広く使用されています。
実質金利とは
名目金利から物価上昇率をひいたものを「実質金利」といい、次の計算式で求められます。
{名目金利 - 物価上昇率 = 実質金利}
実質金利がマイナス(物価上昇率>名目金利)になると、物価が上昇するペースが、利息が増加するペースを上回り、金銭の価値が実質的に目減りすることになります。
お金の価値が目減りすると、消費者は金銭をモノへ交換する意欲が高まり、経済活動や投資が活性化されます。
物価上昇率とは
前月または前年と比較しモノの値段が上がっているか、下がっているかを割合で示したものです。
「日銀が物価上昇率2%を目標にしている」とよくニュースなどで耳にすると思いますが、モノの値段が上がれば物価上昇率はプラス、すなわちインフレになります。下がっていれば物価上昇率はマイナス、すなわちデフレになります。
では具体的な数字を計算式に当てはめて、実質金利を計算してみましょう。
定期預金の場合
1. 店頭金利0.1%、物価上昇率 -1% の場合
2. 店頭金利6%、物価上昇率 6% の場合
1の例では、店頭金利が0.1%と低いですが、物価上昇率が-1%のため、実質金利は1.1%になります。
2の例では、店頭金利が6%と高いですが、物価上昇率も同じく6%のため、実質金利は0%です。
名目金利だけを見ると、2の例は金利が高いのでお金が増える気がしますが、実際はモノの値段も同じだけ上がっているので実質金利はゼロになり、全く増えません。
一方、名目金利が低くても物価上昇率がそれ以上に下がれば、実質金利は高くなり、お金は増えるのです。
このように、お金を増やしたい場合は実質金利が高い定期預金が有利になります。
住宅ローンの場合
1.ローン金利2%、物価上昇率 1%の場合
2. ローン金利 1%、物価上昇率 -1%の場合
お金を借りる場合、ローン金利が1%と低い方が有利に思えますが、モノの値段が下がって物価上昇率ー1%となると、実質金利は2%になります。
ローン金利2%で、かつモノの値段が上がっても物価上昇率がプラス1%であれば、実質金利は1%と、2の例より低くなります。
よって、この例の場合は、ローン金利2%の方が実質は安い金利でお金を借りることができるのです。
このように、お金を借りる場合は実質金利が低い方が有利になります。
実質金利を私生活に活かす
皆さんがいちばん先に目に留める名目金利ですが、物価上昇率も考慮した実質金利を計算することで、最も有利な金利が分かります。
名目金利だけでなく、実質金利も計算する習慣を身に付けて、賢くお金を借りましょう。
執筆日2023年4月16日
監修日2023年4月20日
大阪市立大学商学部学士課程修了。学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。