第 122 回
自己破産をするとその後の生活はどうなる?
借金返済の可能性がほとんどない場合に行われる債務整理の手段が「自己破産」です。借金などの債務が免除されますが、財産もほとんどない状態になります。裁判所の司法統計によると、ここ数年の自己破産件数は7〜9万件となっています。
自己破産とは
裁判所に自己破産の申し立てを行うと、「破産手続き」と「免責手続き」に分かれて進んでいきます。破産申立人に資産がある場合には破産管財人が選任され、財産を処分して借金返済に充当する目処を算出します。その後に免責事項の判断が行われます。
破産申立人に処分できる財産がほとんどない場合には、破産管財人による作業を行わずに免責事項の判断が開始されます。
免責が許可されると借金の返済義務を免れることができます。ただし、税金や国民健康保険料は納付する義務があります。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産のメリット、デメリットには以下のものがあります。手続きや財産の清算状況によっては、申立者に有益になる場合があります。
メリット
一番のメリットは、財産清算後の借金返済義務がなくなる事です。
財産の清算によって自宅や車、高額な家財道具等は手放す必要はありますが、最低限生活していけるだけの財産を残すことができ、手続き終了後に取得した財産は没収されません。
なお、自己破産は収入の有無に関係なく申請できます。
デメリット
デメリットとして真っ先に浮かぶのが、財産を失う事でしょう。例えば、99万円以上の現金や申請者名義の土地・建物、時価20万円以上の自動車等は、差し押さえとなります。
また、自己破産した情報は信用機関に事故情報として登録され、5~10年間は新たなクレジットカードや各種ローンを組むことができなくなります。
その他、就ける職業に制限が掛かったり、借金の保証人が代わりに返済したりする必要が出てきます。
なお、自己破産の申し立てをしても、債務の免責(免除)が認められない場合があります。浪費やギャンブルが原因でした借金や、特定の債権者に対してだけ偏った弁済を行った場合は免責不許可自由として破産が認められませんし、税金や賠償金は免除対象外になります。
その後の生活への影響
デメリットにある通り、自己破産を行うと以下の事ができなくなります。
クレジットカードの新規発行や、新たな借入れができない
クレジットカードやローンが使用できないので、現金払いやご自身の収入の範囲内で生活するよう心がけましょう。
特定の職業に就けない
自己破産の破産者となると、主に弁護士や税理士といった「士業」や公務員の委員長や委員、団体企業の役員、貸金業や割賦業者など一定の業種には就けなくなります。
ただし、免責許可の決定が確定すると復権し、就けるようになる職業もあります。
自己破産後の生活の立て直し
自己破産は再スタートのきっかけです。今まで以上にお金の管理をしっかりして、健全な家計にしていきましょう。お金にどんなに困っても闇金でお金を借りることだけは絶対にしないでください。
執筆日2023年3月31日
監修日2023年4月20日
大阪市立大学商学部学士課程修了。学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。