第 76 回
アメリカで深刻化している「ペイデイ・ローン」とは?その仕組みと危険性
日本ではあまり聞き慣れない「ペイデイ・ローン(Payday Loan)」。
アメリカの低所得者層の間で利用されるローンですが、州法で定められた利息制限以上の高い利率が適用され、問題になっています。
今回は、アメリカのペイデイ・ローンとその危険性について説明します。
ペイデイ・ローンとは?
ペイデイ・ローンとは、アメリカの低所得者層をターゲットにした、次の給料を担保に貸し出される小口の短期ローンです。
アメリカの給料日は一般的に2週間に1度ですが、低所得者層の中には2週間ごとの給料日でも次の給料日までにお金が足りなくなるという人も少なくありません。そのような時に、「ペイデイ・ローン」という消費者金融を利用します。
ペイデイ・ローンの仕組み
消費者金融会社からペイデイ・ローンを借りる際、利用者は借入金額と一緒に利用できない商品券を数ドル分受け取り、借入金額に商品券の額を上乗せした金額分の小切手を消費者金融会社に払い出します。
返済期限が来ると、消費者金融会社はその小切手を銀行に取り立て、返済完了となるため、借り手は消費者金融会社に出向く必要はありません。
例えば、100ドルを借りたい債務者は、ローン会社から100ドル紙幣と共に額面30ドルの使えない商品券を受け取り、額面130ドルの小切手を振り出します。ローン会社は債務者の給与振込日に、指定の銀行から130ドルの支払いを受け取り債権を回収することになります。
ペイデイ・ローンの危険性
借り手の次の給料から返済額を回収することで貸し倒れのリスクが低く抑えられているため、クレジットスコアなどで返済能力が低いと判断された人も、手軽に早く借りられるペイデイ・ローンですが、一方でその金利の高さから返済地獄にはまる人が後を絶たない状況です。
先の例でいえば、借入金と一緒に渡される紙切れ同然の商品券の金額、30ドルが利息に当たります。これは年率換算すると約728%となります。
米非営利融資関連調査機関(Center for Responsible Lending)の調査「Map of U.S. Payday Interest Rates」(2021年3月)によると、ペイデイ・ローンの平均年間利率(APR)が最も高いテキサス州では、$300のローンで664%と非常に高く設定されています。
つまり、米国での法定上限金利(州によって上限金利が異なるが10%程度に定める州が多い)をはるかに上回る暴利をローン会社はとっていることになります。
ペイデイ・ローンの代替手段の普及
ペイデイ・ローンはサブプライムローン問題後に、生活が苦しくなった低所得者層の間で一気に普及しました。しかし、その金利の高さからペイデイ・ローンの総貸出金額自体は近年減少傾向にあります。
最近は、ペイデイ・ローンを借りている低所得者層向けに新しい貸金サービスを始めるフィンテック企業が出てきています。
今後は、低所得者層も適正金利でお金を借りられる手段が広がることが予想されます。
執筆日2023年3月31日
監修日2023年4月20日
大阪市立大学商学部学士課程修了。学生時代にESG投資の有効性に関する研究を行う。主にESG・サステナビリティ領域の業務に従事、現在は企業のサステナビリティ・ガバナンス構築に向け活動中。地球のサステナビリティには最終的に消費者の力が必要と考え、消費者行動に影響を与えるファイナンシャルプランナーを目指す。
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。