第 58 回
目的別ローンは借入目的に合った使い道を!
住宅ローンや自動車ローンを利用すると、大きな金額を借りることができます。
返済期間も長くなることが多く、計画的に申し込む必要がありますが、目的が限定されているので低金利でローンを組むことができます。
では、低金利で借りた資金をその目的以外の使途に使うことは可能なのでしょうか?
どこまでが「目的」に含まれるか
例えば、住宅ローンでは金融機関ごとに対象の範囲が異なります。
土地代と建物代以外にも諸費用(収入印紙代・登記費用・火災保険料など)や水道加入負担金を含む住宅ローンもあります。また、諸費用分を借りることができる「諸費用ローン」を提供している金融機関もあります。
また、自動車ローンでは、車の購入代金の他に登録諸費用・税金・車検費用も含めて借りることができる金融機関もあります。
目的外だと思っても、一度ローンに含まれるか確認してみましょう。
借入金が余った場合
通常は見積もりを取って、概算を出してローンを組みます。その概算より少ない出費で済んだ場合は、借り入れをしたお金が余ることになります。
しかし、多くの金融機関では領収証の提出を求められるので、提出した時点でお金が余ったことは明らかになります。
余った金額にもよりますが、繰上げ返済に回すように指示される可能性が高いでしょう。
「オーバーローン」とは
住宅ローンの「オーバーローン」という言葉があります。。「オーバーローン」の元々の意味は、住宅の資産価値よりも、ローンの残高の方が多いことを表しています。では、最初から多めに借りて、借入金が余るようにしてもらったら場合はどうなるでしょうか。
ローン金額を水増しするためには、不動産業者や建設業者が書類に手を加える必要があります。これが発覚すると、住宅ローンを契約した金融機関から、契約違反として住宅ローンの打ち切りと一括返済を要求されます。
見積もり作成時に不動産業者などから「この見積額なら住宅ローンの金利で車も買えますよ」と提案されても冷静になりましょう。仮にその提案に魅力を感じたとしても、別のデメリットもあります。
それは、結果として支払い総額が増えてしまうことです。
通常、住宅ローンの金利は自動車ローンより低く設定されていますが、支払い期間が長いため支払う利息は多くなります。結果、住宅ローンとは別に自動車ローンを支払った方がトータルの支払額が少なくなるのです。
過去に発生した事件
2018年、JR九州は子会社JR九州住宅の従業員が、住宅ローンの融資に関する資料を偽造し、金融機関に過剰な融資をさせた疑いがあると発表しました。
この事件では、住宅ローンの借り手に700万円の借金があったため、JR九州住宅が工事代金を水増しして、正式には3,300万円の工事代金に対し銀行から4,000万円の融資を受けています。
借入目的にあった使い道を
今回は主に住宅ローンを例に挙げて説明しましたが、目的別ローンは基本的に借り入れをおこなった目的に対して使うことになっています。借入金が余るような場合も考えられますが、想定より大きな金額が余った場合は金融機関に相談をして繰上げ返済に当てるなどの処理をおこないましょう。
執筆日2023年4月17日
監修日2023年4月20日
秋田県出身。大学卒業後はCAとして国内線・国際線に乗務。その後、J-REITの運用会社、外資系不動産会社にてバックオフィス職に従事。
フルタイムワーキングマザーとして奮闘するも、体調を崩し退職。
その際、資産管理やお金に関する各種制度に詳しくなる必要を感じ、FPを取得。
3児の母として、子どもには楽しんで働く親の背中を見せたいと、積極的に活動している。
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。