第 54 回
老後2000万円問題の一手、リバースモーゲージとは?メリット・デメリットを解説
厚生労働省が2022年7月29日に公表した「簡易生命表」によると、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳となっています。
長くなるであろう老後も、物価の高騰や電気料金の値上げなどにより、生活資金がますます必要になる中で、自治体や金融機関では「リバースモーゲージ」という商品を取り扱っています。
言葉の意味とシステム
「リバース」(reverse)は「逆」、「モーゲージ」(mortgage)は「抵当」を意味します。
通常の住宅ローンは、購入する持ち家を担保に金融機関から融資を受けて毎月返済しますが、リバースモーゲージでは、持ち家を担保に金融機関から融資を受けて最後(死亡時)に一括返済します。
住宅ローンでは元金と利息が支払いとともに減っていくのに対して、リバースモーゲージでは「元本が増えていく」点が逆ということです。
メリット
メリットは住み慣れた家を離れずに老後も住み続けられること、ある程度まとまった金額を受け取れることです。また、通常の住宅ローンと違い高齢者でも融資を受けられることもメリットの一つです。
また、子どもはそれぞれ持ち家があり、自宅を相続する対象がいない場合など、自分の死後に不要な財産を処分する手間がなくなります。
デメリット
では、デメリットはどうでしょう。
ここまで「持ち家」に触れてきましたが、抵当になるのは建物と土地を合わせた「不動産」です。
建物は購入時から価値が下がり続けますので、むしろ抵当として価値を持つのは土地の方です。この土地の価格は下落するリスクがあります。
また、予想より長生きした場合も、生前に融資枠を使い切ってしまうリスクがあります。さらに、リバースモーゲージでは変動金利が採用されるため、金利が上昇して融資額が減少し、返済する利息の額が上昇するリスクがあります。
いずれのリスクも抵当権が実行されると、高齢者になってから家を出なくてはならなくなる可能性があります。
様々な選択肢
デメリットになるリスクは予測不可能ですが、条件を比較検討することでリスクを軽減することができます。
例えば、全国社会福祉協議会の提供する「生活福祉資金貸付制度」であれば、同じく不動産を担保にして貸付ができるので、民間金融機関と比較できます。
また、金融機関によっては融資期間を上限期間なしの「終身」としているものもあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、検討してみるとよいでしょう。
ゆとりある老後のために
ニュースなどでも「公的年金と貯蓄だけでは生活資金が不足する可能性が高い」という指摘がされていますが、リバースモーゲージのような商品で収入をさらに増やす選択肢もあります。
しかし、融資をうけるのではなく「ライフスタイルを変えて出費を縮小する」という選択肢もあります。ゆとりある老後とは、お金があることだけではないかもしれません。自分にとっての「ゆとりある老後」を考えてみてはどうでしょう。
リバースモーゲージは、そのための選択肢の1つとして知っておきましょう。
執筆日2023年3月26日
監修日2023年3月28日
長く教材制作会社にて、校正や原稿作成など、お金とはほとんど縁のない世界で仕事をしていたが、数年後にやってくる夫の定年退職を機に、一念発起。
二人の子供たちに背中を押され、FP資格取得に向けて勉強を開始し、無事合格を果たすことができた。
FPとしてのステップアップを目指そうと考えていたところに、FPSの求人と出会い、即応募。そして、現在に至る。
FP(金融)業界の現状を知り、お客様との利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。
個人のお客様だけでなく、法人向けのコンサルティングにも対応するために、中小企業診断士の勉強を経て2021年度に一次試験合格を果たす。
個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートすることを心掛けている。