事業者が運営資金を調達する手段にはいくつかありますが、その中で「商工ローン」と「ビジネスローン」があります。ところが、この2つの違いを理解している方はあまり多くいらっしゃらないのではないしょうか。。

今回はこの2つのローンはどういった経緯で誕生したのか？また、ビジネスローンを比較する際のポイントについて整理してみます。

商工ローンの歴史

どちらも中小企業向けの融資という点では同じでしたが、かつては「ビジネスローン=銀行」「商工ローン=ノンバンク」という区分がありました。
さらに商工ローンには担保なし・融資が早い・銀行より審査が甘いなどのメリットがある一方、銀行より金利が高いというデメリットがありました。

このメリットとデメリットにより、銀行のビジネスローンとは住み分けができていました。

商工ローン問題

しかし、90年代の終わりに「日栄」と「商工ファンド」という商工ローン大手2社が社会問題になります。

強引な取り立てで債務者に「返せないなら腎臓を売れ」と迫る実態が被害者の録音テープから明らかになり、以前から指摘されていた高金利と重なって、週刊誌などで大々的に取り上げられました。

結果、商工ローンのイメージは一気に悪くなり「〜ビジネスローン」のように次々と名称が変更されました。

このような背景から、現在では「商工ローン」と「ビジネスローン」が似たものとなっています。

ビジネスローンの比較

では「ビジネスローン」と名のつくものはサービスも統一されたのか、というとそんなことはありません。

まず、金利の低いところは対象地域が限定されていたり、対象が法人のみ（もしくは個人事業主のみ）に制限されています。また、連帯保証人の必要可否、融資の早さ、銀行口座開設の必要可否などに違いがあります。

半官半民の政府系金融機関「商工中金」とは

ビジネスローンを取り扱う金融機関のうち、「商工中金」という他とは位置付けが異なる組織があります。

正式名称を「株式会社商工組合中央金庫」と言い、昭和11年に設立された政府と民間団体が共同で出資する半官半民の政府系金融機関です。取り扱う金融商品は融資だけではなく、預金・債券・国際為替・手形など多岐に渡ります。

商工中金は、中小企業等共同組合・商工組合・酒造組合・輸出組合などで構成されています。商工中金が企業に行う「一般的な融資」を受ける際にはこれらの組合のいずれかに加入する必要があります。

金利は公表されていませんが、一般のビジネスローンより低く設定されています。

ビジネスローンの活用も1つの選択肢として

銀行で融資が上限に達してしまったとしても、ビジネスローンは別枠で申し込むことができます。

高金利のため、長期の資金調達先には向いていませんが、急に運転資金が必要になった場合などの一時的な手段としては有効と考えられます。

執筆日2023年4月15日
監修日2023年5月9日